エンディングノートを買ってみたものの、最初のページで手が止まってしまった。あるいは「親に書いておいてほしい」と思いながら、なかなか言い出せない。そんな方は多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。エンディングノートは、全部を埋めなくて大丈夫です。 書きやすいところから少しずつ、そして「家族が困ること」から先に書くのがコツです。
この記事では、調べてわかったことをもとに、次の3つをまとめました。
- エンディングノートと遺言書の違い
- 書く項目の一覧と、書きやすい順番
- 親にエンディングノートを勧めるときの伝え方
エンディングノートとは?遺言書との違い
エンディングノートは、もしものときに家族が困らないよう、自分の情報や希望を書きとめておくノートです。決まった書式はなく、市販のノートでも、自治体が配っているノートでも、普通のノートでもかまいません。
いちばん大事なのは、エンディングノートには法的な効力がないという点です。
| エンディングノート | 遺言書 | |
|---|---|---|
| 目的 | 情報や希望を家族に伝える | 財産の分け方などを法的に決める |
| 書式 | 自由 | 民法で決まった方式がある |
| 法的な効力 | なし | あり(方式を満たした場合) |
| 書ける内容 | 何でも(連絡先、医療・介護の希望、思い出など) | 主に財産・相続に関すること |
| 書き直し | いつでも自由に | 方式に沿って作り直す |
「この家は長男に」「預金は半分ずつ」といった財産の分け方を確実に残したい場合は、遺言書が必要です。自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)は、法務局で保管してもらえる「自筆証書遺言書保管制度」もあります(手数料がかかります)。
財産や相続のことは、家族の状況によって最適な方法が変わります。迷ったら、司法書士・弁護士・税理士などの専門家に相談してください。
エンディングノートに書く項目一覧
市販のノートには多くの項目が並んでいますが、大きく分けると次の7つです。
| 分類 | 主な項目 | 家族が困る度 |
|---|---|---|
| 自分のこと | 氏名、生年月日、本籍、マイナンバーの保管場所、健康保険証・年金手帳の保管場所 | 高 |
| お金のこと | 銀行口座(銀行名・支店名)、証券口座、保険、年金、ローン・借入れ、クレジットカード | 高 |
| 連絡先 | 親族、友人、かかりつけ医、訃報を知らせてほしい人 | 高 |
| 医療・介護の希望 | 持病・服薬、延命治療の希望、介護が必要になったら住みたい場所 | 中〜高 |
| 葬儀・お墓の希望 | 葬儀の形(家族葬など)、宗派・菩提寺、お墓や納骨の希望、遺影に使いたい写真 | 中 |
| デジタル・契約 | スマホの解除方法の保管場所、ネット銀行、サブスク、SNS | 中〜高 |
| 家族へのメッセージ | 感謝の言葉、伝えておきたいこと | ― |
「家族が困る度」は、もしものときに家族が調べるのが大変かどうかの目安です。
暗証番号やパスワードは「そのまま書かない」
エンディングノートは、人に見られる可能性があります。暗証番号やパスワードをそのまま書くのは避けましょう。
- 「どこに保管しているか」だけを書く
- 別の紙に書いて封をし、保管場所をノートに書く
といった方法が安心です。国民生活センターも、スマホのパスワードなどを家族が見つけられる形で残しておく工夫を紹介しています。
書きやすい順番は「3ステップ」
最初のページから順に埋めようとすると、途中で疲れてしまいがちです。次の順番がおすすめです。
ステップ1:事実を書く(10分でできるところ)
まずは、考えなくても書ける「事実」から始めます。
- 氏名・生年月日・本籍
- 保険証・年金手帳・通帳などの保管場所
- 家族・親族の連絡先
ここまで書けると「ノートが始まった」感覚になり、続けやすくなります。
ステップ2:家族が困ることを書く
次に、もしものときに家族が調べるのが大変なことを書きます。
- 銀行・証券・保険の一覧(金額は書かなくてもOK)
- ローン・借入れ・保証人になっているもの
- 毎月引き落とされている契約(携帯、サブスク、新聞など)
- スマホやパソコンの解除方法の保管場所
口座や契約がわからないと、家族は郵便物や通帳をひとつずつ調べることになります。ここが書けていれば、エンディングノートの役目の半分は果たせていると考えて大丈夫です。
ステップ3:気持ち・希望を書く
最後に、考える時間が必要な項目です。
- 延命治療や介護の希望
- 葬儀やお墓の希望
- 家族へのメッセージ
医療やケアの希望は、書くだけでなく家族と話しておくのが大切です。厚生労働省は、もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族などと繰り返し話し合う取り組みを「人生会議(ACP)」と呼んで勧めています。気持ちは変わってもいいので、話すたびに書き直せば十分です。
続けるためのコツ
- 鉛筆やフリクションで書く:気持ちが変わっても書き直せる
- 日付を入れる:いつ書いた情報かがわかる
- 年に1回見直す:誕生日やお正月など、日を決めておく
- 置き場所を家族に伝える:見つけてもらえなければ意味がない
ノートは、無料のものから始めても大丈夫です。自治体によっては、独自のエンディングノートを窓口で配ったり、ホームページでダウンロードできるようにしています(例:横浜市港北区、鹿児島市、奈良市など。2026年10月確認)。お住まいの市区町村の高齢福祉の窓口や、地域包括支援センターで聞いてみてください。
親にエンディングノートを勧めるときの伝え方
「親に書いてほしい」と思っても、切り出し方は難しいものです。「縁起でもない」と受け取られないよう、次のポイントを意識してみてください。
言い方の例
| 避けたい言い方 | 言い換えの例 |
|---|---|
| 「もしものときのために書いておいて」 | 「私も書き始めたんだけど、一緒にやってみない?」 |
| 「財産のこと、全部書いてね」 | 「銀行の名前だけでも教えてもらえると助かる」 |
| 「早く書いてよ」 | 「お正月に集まったとき、少しずつ話そうか」 |
| 「延命治療はどうするの?」 | 「テレビで見たんだけど、お母さんならどうしたい?」 |
勧めるときのポイント
- 自分も書く:「私も書いている」と言うと、押しつけに聞こえにくい
- 全部を求めない:まずは保管場所と連絡先だけ、など小さく始める
- きっかけを使う:親の誕生日、お盆やお正月、知人の葬儀、テレビの話題など
- 親の気持ちを聞く場にする:「書かせる」より「教えてもらう」姿勢で
話しにくい場合は、一緒に自治体のノートをもらいに行ったり、書店で選んだりするのも、自然なきっかけになります。
エンディングノートを書く前のチェックリスト
- 使うノートを決めた(市販・自治体配布・普通のノート)
- 鉛筆など、書き直せる筆記具を用意した
- まず「事実」(氏名・保管場所・連絡先)を書いた
- 銀行・保険・ローン・毎月の契約を一覧にした
- 暗証番号・パスワードをそのまま書いていない
- 医療・介護の希望を、家族と一度話した
- 財産の分け方を決めたいなら、遺言書が必要か専門家に相談した
- ノートの置き場所を家族に伝えた
- 見直す日を決めた(誕生日・お正月など)
まとめ
エンディングノートは、完璧に書かなくても大丈夫です。大切なのは次の3つです。
- 法的な効力はないので、財産の分け方を確実に残したいなら遺言書を検討する
- 事実 → 家族が困ること → 気持ちの順で、書きやすいところから書く
- 親に勧めるときは、自分も書いて、一緒に少しずつ
まずは今日、氏名と「通帳の置き場所」の1行から始めてみてください。
参考(2026年10月1日確認)
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
- 法務局(津地方法務局)遺言書・エンディングノートに関する資料
- 厚生労働省「『人生会議』してみませんか」
- 国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(2024年11月20日)
- 横浜市港北区・鹿児島市・奈良市 エンディングノートの配布案内

