「遠くて通えないし、継ぐ人もいない。でも、墓じまいをしないと何か困るの?」
親のお墓や実家のお墓のことで、こんなふうに迷っている方は多いと思います。
先に結論をお伝えします。
- 墓じまいは「しなければいけない」ものではありません。 調べた範囲では、墓じまいをしないこと自体に罰則を定めた決まりは見当たりませんでした
- ただし、管理料を払わず、連絡もつかない状態が続くと「無縁墓」として整理されることがあります。その場合、遺骨はほかの場所へ移され、墓石も撤去されます
- 大切なのは「墓じまいするかどうか」より、放置しないこと。続ける・託す・墓じまいするなど、選択肢はいくつもあります
この記事では、公的な資料で調べてわかったことをもとに、放置されたお墓がたどる流れと、選択肢の比較、今日からできるチェックリストをまとめました。
※お墓の扱いは、墓地の規則や契約、ご家族の事情によって変わります。具体的なことは墓地の管理者や、お墓がある市区町村の窓口に確認してください。
結論:墓じまいは義務ではない。困るのは「放置」
墓じまいは、法律では「改葬(かいそう)」にあたります。お墓の遺骨を取り出して、ほかのお墓や納骨堂に移すことです。改葬するときは、市区町村長の許可が必要です。
つまり、墓じまいは「するなら手続きが必要」なもの。「しなければならない」ものではありません。
問題になるのは、次のような状態が長く続くことです。
- 管理料(年間の管理費)を払っていない
- 墓地の管理者から連絡がつかない
- 誰がお墓を継いだのか、はっきりしない
こうなると、墓地の管理者は「縁故者(えんこしゃ)がいないお墓」、いわゆる無縁墓として整理を考えることになります。
お墓を放置するとどうなる?無縁墓になるまでの流れ

公営墓地の場合、無縁墓の整理はおおむね次のように進みます(総務省の調査や法令から整理しました)。
| 段階 | 何が起きるか |
|---|---|
| 1. 管理料の滞納・連絡不通 | 管理料が長く払われていない、手紙が届かない |
| 2. 縁故者の調査 | 戸籍などで親族を調べ、連絡を試みる |
| 3. 官報と立札で公告(1年間) | 「1年以内に申し出てください」と官報に載せ、お墓の前に立札を1年間立てる |
| 4. 使用許可の取消し | 申し出がなければ、お墓を使う権利がなくなる |
| 5. 遺骨の移動・墓石の撤去 | 市区町村長の許可を得て遺骨をほかの場所へ移し、墓石を片付ける |
どのくらい滞納すると「無縁」と判断される?
判断の目安は、墓地によって違います。総務省の調査では、たとえば次のような例がありました。
- 管理料の滞納が3年程度で、調べても縁故者がわからない
- 管理料の滞納が10年程度で、調べても縁故者が見つからない
- 使用者が亡くなって5年たっても、承継の申し出がない
目安に当てはまったからといって、すぐに無縁墓と決まるわけではありません。ただ、「何年も放っておくと整理の対象になりうる」ことは知っておきたいところです。
実際にどれくらい起きている?
総務省が公営墓地を持つ765の市町村を調べたところ、約6割(58.2%)が「無縁墓(疑いを含む)がある」と答えていました。見つかるきっかけで一番多かったのは、管理料の滞納です。
一方で、遺骨の移動や墓石の撤去まで進められた市町村は6.1%にとどまります。手続きに時間と手間がかかるためです。
墓石の撤去費用は?
厚生労働省は2025年12月、無縁墓の墓石の扱いについて考え方を整理しました。墓石は、お墓を継いだ人(祭祀承継者)のものと考えられています。条例などで撤去の義務が定められている場合には、自治体が撤去した費用を請求する考え方も示されています。
「放っておけば、いつか誰かが片付けてくれる」とは限らない、ということです。
放置すると家族が困ること
無縁墓になるまでには何年もかかります。そのあいだに、家族には次のような負担が残りやすくなります。
- 誰が継ぐのかがあいまいになる:お墓は、故人の指定や慣習、家庭裁判所の判断で決まる「祭祀承継者」が引き継ぎます。話し合わないままだと、いざというときにもめやすくなります
- 遺骨の行き先を家族が選べなくなる:無縁墓として整理されると、遺骨はほかの場所へ移されます。移された先によっては、あとから取り出すのが難しい場合もあります
- お寺との関係がこじれやすくなる:国民生活センターの資料では、長く連絡しないままお墓を任せきりにしていたことが、墓じまいのときの離檀料トラブルの背景になっている例もあると紹介されています
墓じまい以外も含めた5つの選択肢

「墓じまいするか、放置するか」の二択ではありません。主な選択肢を比べてみました。
| 選択肢 | 内容 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| そのまま続ける | 管理料を払い、お参りを続ける | 近くに住む家族がいる | 次に継ぐ人を決めておく |
| 近くの親族に託す | 管理やお参りをお願いする | 墓地の近くに親族がいる | お礼や費用の分担を話し合う |
| 管理者に相談して供養を任せる | 寺院や霊園に今後の供養・管理を相談する | 遠方で通えないが、お墓は残したい | 墓地ごとに対応が違う。費用は書面で確認 |
| 墓じまいして遺骨を移す | 改葬許可をとり、永代供養墓・樹木葬・納骨堂などへ | 継ぐ人がいない、将来の負担をなくしたい | 親族の同意、費用、離檀料の話し合い |
| まず話し合いだけ始める | 今すぐ決めず、情報を集める | 気持ちの整理がついていない | 管理料だけは払い続ける |
国民生活センターの資料でも、墓じまいだけが答えではなく、近くの親族や住職に管理を託す方法も一つの考え方として紹介されています。
放置しないためのチェックリスト
今日からできることを並べました。全部でなくても、上から順に一つずつで大丈夫です。
- お墓の場所と、墓地の管理者(寺院・霊園・自治体)の連絡先を確認した
- 墓地の使用許可証(権利証)や契約書の保管場所を確認した
- 管理料の金額と、支払いが止まっていないかを確認した
- 管理者に登録している住所・連絡先が今のものか確認した
- 今、お墓を継いでいる人(名義人)が誰か確認した
- 家族で「今後どうしたいか」を一度話した
- お墓に何人分の遺骨が入っているか、わかる範囲で確認した
- 墓じまいを考えるなら、管理者に手順と費用を書面で確認した
墓じまいを選ぶ場合のおおまかな流れ
墓じまいをすると決めた場合は、おおむね次の順番で進めます。
- 親族と話し合い、同意を得る
- 遺骨の新しい行き先を決め、受け入れの証明をもらう
- 今の墓地の管理者から、埋葬(埋蔵)の証明をもらう
- お墓がある市区町村に改葬許可を申請する
- 閉眼供養(魂抜き)のあと、遺骨を取り出し、墓石を撤去する
- 新しい場所に納骨する
費用や離檀料は、墓地やお寺によって大きく違います。金額に納得できないときは、根拠を尋ねて話し合いましょう。困ったときは、消費者ホットライン「188」で相談できます。
まとめ

- 墓じまいは義務ではありません。ただし、管理料の滞納や連絡不通が続くと、無縁墓として整理されることがあります
- 無縁墓の整理は「官報と立札で1年間の公告」など慎重に進みますが、遺骨の行き先を家族が選べなくなるおそれがあります
- 選択肢は「続ける・託す・任せる・墓じまい・まず話し合う」の5つ。放置しないことが何より大切です
まずは、お墓の連絡先と管理料の支払いを確かめるところから始めてみてください。
参考(2026年10月1日確認)
- 墓地、埋葬等に関する法律/同法施行規則(e-Gov法令検索)
- 民法 第897条(e-Gov法令検索)
- 総務省行政評価局「墓地行政に関する調査―公営墓地における無縁墳墓を中心として―」(2023年9月)
- 厚生労働省「無縁改葬後の墓石等の取扱い等について」(2025年12月8日)
- 国民生活センター「墓・葬儀サービス」各種相談の件数や傾向
- 国民生活センター『国民生活』2025年12月号「墓じまい(廃墓)をする場合の留意点」

